世界観

4章:アミロイドβの沈着と除去に関わる遺伝子変異ーーあるいはヒュドラ

忘却はあらゆる不安の特効薬である。 死が万人の恐怖なら、認知症は人に備わる最後の救いなのだろう。 しかし、忘れられたものは存在しなくなるわけではない。   舞台は都市部を離れ、閉鎖された田舎へ移る。   七年前、スフィン...

カフカの赤と黒

      フェノールフタレイン溶液について。 水に溶けにくいフェノールフタレインをエチルアルコールに1%溶解したものは、ph9以上で赤色を呈する。 そのため、対象が塩基性かを判別するための指示薬として使用される。   ...

片肺とサナトリウムの

よろしければ作中に登場する音楽とともにお読みください。 死を戯曲化しているなどと、えらく浪漫じみたタッチで批判されたのも記憶に新しい。 そのサナトリウムに奇妙な出来事が起きたのは、高原に早い秋が染み込んできた頃だった。 ...

グレンデルに関する前哨的課題

  【問題】   以下の文章を読んで違和感を形にせよ。    陰鬱な自然に挑むように、その城はあった。  ヘオロット城は、前線である。  王とその麾下の兵士たちは、異形たちが荒れ地を越えて人の世界に流入しないように、ここ...

廃章:報酬系回路の電気刺激で行動制御は可能か――あるいは アマノサグメ

  わたしは不幸にも知っている。時には嘘によるほかは語られぬ真実もあることを――芥川龍之介         1.レミニセンス   虹彩が狙いをつけている。 君は虹と関係しただろう。   指差したか。 写真を撮ったのか。 ...

ホワイトアウト、そしてアンサー

  ――【御前】と呼ばれる少女による回想―― それを追ってみる方に心が傾いたのは、戦略が私に向けて調整されていたからだろう。 まず、相手は私が生徒会室前の廊下に、朝、誰より早く到達することを知っていた。 &nb...

Love to be or not to be

  サイファー:お金を寄越したまえ。   正宗:いいか、サイファー、人は楽してお金を得ようとしたらダメになるんだよ。   サイファー: 僕は人ではない。   正宗: イデアも。ダメになるんだ。   サイファー: どうして...

菊と刀とバレンタイン

  教室に戻った生徒がそれを話題にすると、水に熱した石を放り込んだように、教室が好奇に突沸した。 【御前】がチョコレートを詰め込んだ紙袋を持っていた!   それは男子生徒にとって甘く苦い、それこそチョコレートの風味がする...

3章:恐怖条件付け後、セロトニン放出箇所の変化をもたらす機構――あるいはアークエンジェル

七年前、既に蝕まれていた。 あの日、神々が開始した、実験の名前はプロジェクト・スフィンクス。 突如終息し、今再び、【至高の名】の目醒めとともに潜む毒があらわになる。   善良さ故に、見捨てるものの数を数えよう。 被害者の...

2章:自我同一性の喪失が重篤化した乖離性障害のトリガー ――あるいはヤヌス

勝利は何によって証明されるのか。 至高のイデア・サイファーを下した後に開始するのは、自己否定の物語。【魔述師】は選ぶのではなく選ばされる。 さらなる苦痛の将来を。 私は誰? 鏡が問いかける。問いは無限に反射し、新たな敵も...

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